絵の中に妖精がやってきた時
母は花が好きだった。
どんなに忙しくても、毎朝花たちに水をやり、手入れをし、
庭には季節ごとに色とりどりの美しい花たちが咲いた。
私は、あまり花は好きではなかった。
庭を眺める母の笑顔が、私や家族に向ける笑顔とはまた違った種類のものだったから。
それがくやしかったのかもしれない。
大人になって、母が亡くなって何年もたってから、
ふと花に話しかける母の姿を思い出すようになった。
どんなに母は、花に癒されていたのか、後になってやっとわかるようになった。
ある日、家の近くの遊歩道を自転車で通り抜ける時、
道の両脇から、春の花たちが手を伸ばしているようで、思わず私は話しかけた。
「ずっと母の心を癒してくれてありがとう。
あなたたちはあの頃のうちの庭の花たちとも、きっとつながっているのよね。
ありがとう…ほんとにありがとう」
それに答えてくれるかのように、花は大きく揺れてあたたかい風が吹いた。
「時空を超えたコミュニケーションてあるんだ…!」
それから私は、妖精たちと友だちになった。
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